日本中小企業学会東部部会の第2回研究報告会は、全国大会準備委員会の下、東洋大学の全面的な支援を受けハイブリッド開催され、活発な議論が展開されました。
■日時 2022年5月22日(日) 13:30~15:15 (終了後、役員会)
■会場:東洋大学 白山キャンパス8号館 8204教室
(対面とオンラインでのハイブリッド)
■参加者:28名
■【研究報告1】
報告者:山本聡(東洋大学)
テーマ:「自営業者のバーンアウトと企業家的ストレス、個人的企業家志向性」
ホスト・司会:堀 潔(桜美林大学)
報告内容:
日本社会の特徴とされる過労死については主として雇用者に注目が集まってきた。本報告では、その背景にあるバーンアウトの問題を取り上げ、中小企業の被雇用者と比較しつつ、自営業者のバーンアウトの決定要因を明らかにするものである。分析に当たっては、心理学的な概念とともに経営学の概念である個人的企業家志向性(IEO)を取り入れたことが本報告の特徴の一つである。研究方法は、約3000人に対するアンケートへの回答に基づく回帰分析である。主な結果は、①中小企業の被雇用者と比べて自営業者はバーンアウトしにくいこと、②IEOが高いほど自営業者も中小企業の被雇用者もバーンアウトしにくいこと、③情動葛藤は中小企業の被雇用者に、職務葛藤は自営業者のバーンアウトの可能性を高めること、④子どもを持っていることは中小企業の被雇用者のみでバーンアウトの確率を下げること、⑤女性であることは自営業主のみでバーンアウトにつながりやすいこと、などである。報告後の質疑応答では、自営業者の定義や研究の含意、ワークフレキシビリティとの関係、大企業の被雇用者との相違点、企業規模との関係などが議論された。
■【研究報告2】
報告者:鹿住倫世(専修大学)
テーマ:「見えない女性起業家に光を当てる」
ホスト・司会:堀 潔(桜美林大学)
報告内容:
フォーマルな組織(自治体や商工会議所など)は女性起業家に対する創業セミナーなどの支援を講じている。しかし、現状、こうした支援は潜在的な女性起業家にあまり活用されていない。その背景には、多様な女性起業家の多様なニーズと支援策との不一致や「男性目線」「女性に対するバイアス」に基づく対応といった問題が指摘される。その一方、積極的に活用され成果を挙げているインフォーマルな組織(NPOや企業など)による支援が存在する。こうした状況を踏まえ、本報告では、三つのインフォーマルな支援事例の分析を通じて、女性に対する有効な起業支援のあり方が議論された。事例分析からは、①女性の起業が増加することによる社会的なインパクトの認識、②インフォーマルな支援者との交流を通じてフォーマルな支援者が女性の支援ニーズを理解することの重要性、③支援ニーズの制度化の必要性などの含意が導かれ、社会実装プロセスを応用することの有効性が指摘された。報告後の質疑応答では、キャリアを十分有する女性とそうではない女性への支援のあり方、女性の起業に対する正当性の確保、政策支援の正当化獲得の必要性などが議論された。
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