2021-08-29

2021年 東部部会 第6回 研究報告会の開催報告

 日本中小企業学会東部部会の第6回オンライン研究報告会は、オンライン会議システム「Zoom」を利用して開催され、活発な議論が展開されました。

■日時 2021827日(金)11:0012:00

■実施方法:Zoomによるオンライン報告

■参加者:24

■【第1研究報告】

報告者:長沼 大海(日本政策金融公庫総合研究所)

テーマ:「自然災害発生時に事業を継続させる企業の特徴と有効な備え被災企業の事業 中断状況からみた分析

 ホスト・司会:堀潔(桜美林大学)

 報告内容:

 日本政策金融公庫総合研究所「自然災害の経営への影響に関するアンケート」(2020年)の分析結果に基づき、自然災害の影響で事業を中断した中小企業の特徴と中断を防ぐうえで有効となる対策・備えについて議論された。同アンケート調査は202010月にインターネットを使って実施したもので、有効回答数は1521件(事前調査)、1,326件(詳細調査)である。結論として、業歴が短い企業や経営状況が厳しい企業ほど、事業を中断しやすい傾向があることや、備えをする余裕がない企業に対して、災害の備えをおろそかにしないように積極的に周知し、サポートする取り組みが求められることが示された。さらに、積極的な被害だけでなく、間接的被害も事業の中断につながる可能性があることから、被害を食い止めるための対策の必要性が指摘された。また、従業員の多様化、連絡手段の確保、手元資金の確保といった備えを優先しておく必要性が示唆された。報告後の質疑応答では、新自由主義的視点からの政策的インプリケーション、災害発生時の資金調達方法、本研究における理論的枠組みの必要性や説明変数の扱い、推計方法などについての議論がされた。


■日時 2021827日(金)12:0013:00

■実施方法:Zoomによるオンライン報告

■参加者:26

■【第2研究報告】

 報告者:許 伸江(跡見学園女子大学)

 テーマ:「中小企業とダイバーシティ・マネジメント」

 ホスト・司会:堀潔(桜美林大学)

 報告内容:

 多様な人材の雇用の場としての中小企業の可能性と、中小企業のダイバーシティ・マネジメントの取り組みやその成果について報告された。従来から中小企業論においては、中小企業における女性や障害者雇用などについて多くの知見が蓄積されてきた。本報告では、ダイバーシティの定義とともに、これらの先行研究が整理された後、八つの事例が紹介された。そのまとめとして、経営者や組織文化がダイバーシティ・マネジメントにおいて大きな役割を果たすこと、事業承継や第二創業が契機となりうること、SDGsによって従来からの暗黙的な取り組みが捉え直され新たな気づきにつながっていることなどが考察された。そのうえで、中小企業の存続、発展に向けての戦略的なダイバーシティ・マネジメントの重要性や多様な主体の個性が発揮され、やりがいをもって仕事ができるとしての中小企業の存在意義が論じられた。報告後のディスカッションでは、人的資源管理や中小企業における女性雇用に関する先行研究との接点や日本的経営論・雇用慣行との関連などが議論された。



 


2021-08-23

2021年 東部部会 第5回 研究報告会の開催報告

日本中小企業学会東部部会の第5回オンライン研究報告会は、オンライン会議システム「Zoom」を利用して開催され、活発な議論が展開されました。

■日時 2021822日(日)11:0012:10

■実施方法:Zoomによるオンライン報告

■参加者:17

■【研究報告】

報告者:難波 正憲(立命館アジア太平洋大学名誉教授)

テーマ:「グローバル・ニッチトップ企業の類型化祖業と新製品開発の視点から

 ホスト・司会:堀潔(桜美林大学)

 報告内容:

 GNT(グローバル・ニッチトップ)企業の祖業と新製品開発との関連性が議論され、産業の新たな趨勢がみられる中、中小企業におけるGNT製品創出のプロセスと要因を明らかにすることの意義が示された。半構造インタビューによるアンケート調査の結果から、GNT企業の①祖業との関連における位置付け、②GNT製品の保有数、③GNT製品創出の経路・契機・背景の3つの切り口から類型化を行い、
それぞれの関連性が紹介された。また日本とドイツとの比較分析から、両国における差異が示された。日本企業は外部から持ち込まれたニーズ(社会趨勢の変化)に対応する形で蓄積された社内資源をGNT製品創出に結びつけていく特徴がみられる一方で、ドイツ企業は自らの積極対応によるニーズの探索から祖業を維持しながらGNT製品を増やしていく特徴がみられることが指摘された。報告後の質疑応答では、祖業離脱型のGNT製品開発と祖業における人材・技術・市場との関連、受け身対応と積極対応における要因の違いが与えるGNT製品創出への影響、資金調達の方法、国内中小企業経営者への示唆などが議論された。

2021-08-20

2021年 東部部会 第4回 研究報告会の開催報告

日本中小企業学会東部部会の第3回オンライン研究報告会は、オンライン会議システム「Zoom」を利用して開催され、活発な議論が展開されました。 

■日時 2021819日(木)13:0014:10

■実施方法:Zoomによるオンライン報告

■参加者:24

■【研究報告】

 報告者:黒澤 佳子(法政大学(院))

 テーマ:「女性へ事業承継した中小企業の継承後の成長要因」

 ホスト・司会:遠山恭司(立教大学)

 報告内容:

 女性への事業承継は近年増加していることを背景として、女性に事業承継した企業の承継後の成長要因について報告された。先行研究では、女性後継者の特徴として、準備期間が十分にとれておらず、企業経営の経験がないことが指摘されている。報告では、これらの特徴を踏まえ、前経営者の影響力や慣性への対応や、自社に対する客観的な視点の活用という観点から、製造業企業の女性後継者3人へのヒアリングの結果が分析された。分析の結果、女性後継者は、自社を客観的に捉え前経営者とは異なるアプローチをとっていること、自社の強みや「女性の視点」を生かした新事業を展開していること、前経営者がイノベーションの阻害要因ではなく経営経験の不足を補う役割を果たしていることなどが明らかにされた。報告後の質疑応答では、女性特有の認知を生み出す要因や男性後継者の違い、経営者として既存組織に入っていく際の男女の違いなどについて質疑応答がなされた。





2021-08-12

2021年 東部部会 第3回 研究報告会の開催報告

日本中小企業学会東部部会の第3回オンライン研究報告会は、オンライン会議システム「Zoom」を利用して開催され、活発な議論が展開されました。

■日時 2021年8月12日(月)12:00~13:00

■実施方法:Zoomによるオンライン報告

■参加者:26名

■【研究報告】

 報告者:遠山 浩(専修大学)

 テーマ:「産業集積と同族・ファミリービジネスへのガバナンス、アントレプレナー創出

      ー技術集積の検討がポイントー」

 報告内容:

産業集積におけるアントレプレナー、イノベーションの創出におけるファミリービジネスの可能性が報告された。産業集積を形成する起業の多くはファミリービジネスである。製品市場は産業集積内のガバナンスとして重要な役割を果たしており、アントレプレナーシップを発揮することで産業集積内への取引への参加のための条件ともいえる。この点でファミリービジネスはアントレプレナー輩出の重要な基盤といえる。また、ファミリービジネスの規模拡大に伴い生じるステークホルダーの多様化への対応、特に付加価値を創出し、分配することが必要となる。付加価値の分配は当該集積に優秀な人材(従業員を含む)を集めるうえでも重要である。こうしたプロセスにおいて重視すべきは技術集積と社会的情緒資産である。それぞれイノベーション、ガバナンスを効果的なものという役割を担う。報告では、以上の考察に基づき、付加価値の適切な分配を促すために福利厚生費に対する減税や、企業家輩出のための、同族・ファミリー企業の後継者育成、リカレント教育への支援などの政策含意が提言された。報告後のディスカッションでは、イノベーションにおけるファミリービジネスの役割や、都市型産業集積の広域化とアントレプレナーシップとの関連、産業集積内でのガバナンスのあり方などが全国大会に向けて議論された。





2021-08-11

2021年 東部部会 第2回 研究報告会の開催報告

日本中小企業学会東部部会の第2回オンライン研究報告会は、オンライン会議  システム「Zoom」を利用して開催され、活発な議論が展開されました。


■日時 2021年8月11日(月)11:00~12:10

■実施方法:Zoomによるオンライン報告

■参加者:24名

■【研究報告】

 報告者:深沼光(日本政策金融公庫総合研究所)・山田佳美(日本政策金融公庫総合研究所)

 テーマ:「外国人経営者の資金調達力の決定要因」

 ホスト・司会:堀潔(桜美林大学)

 報告内容:

海外出身の外国人経営者が増加している。しかし、金融機関からの資金調達が困難という経営課題に直面している経営者は少なくない。本研究報告会では、こうした状況を背景として実施された、外国人経営者の金融機関からの資金調達力の決定要因に関する研究の成果が発表された。まず2020年に実施された独自のアンケート結果に基づき、学歴が高く、留学等事業経営以外の目的で来日した人が多く、年齢も比較的低いという外国人経営者の特徴が紹介された。その後、複数の資金調達状況の指標を用いて行われた計量分析の結果として、日本語能力が高い外国人経営者は金融機関からの資金調達が容易であること、日本人の配偶者がいる場合現時点での資金調達が行いやすくなること、日本国内の出身国コミュニティーの支援は資金調達力を高めないことなどが報告された。最後に、分析結果に基づき、日本語能力(特に金融関連用語)の習得支援や金融機関とのコミュニケーションの円滑化に向けた支援の必要性などの政策含意が提示された。報告後の質疑応答では、外国人経営者のキャリアやエスニシティと資金調達力との関係、日本人経営者との比較の可能性など今後の研究の可能性が議論された。




2021-08-02

東部部会の研究報告会のプログラムの修正版について

日本中小企業学会

東部部会会員各位

 

東部部会事務局です。

1回部会報告へご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

 

次回以降の部会につきまして、724日にお送りしたzoomリンク情報に誤った

箇所があったため、再度、修正版を添付ファイルにて8月3日にお送りします。

次回以降、8月3日付けのメールのpdfにあるリンクからご参加くださいますよう

お願いいたします。

 

この度はご迷惑をおかけしまして、お詫び申し上げます。 

会員の皆さまの積極的な参加を期待しております。 

 

日本中小企業学会 東部部会事務局

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 堀  潔(副会長:桜美林大学)

 許 伸江(幹事:跡見学園女子大学)、鈴木 正明(幹事:日本大学)

 カン ビクトリヤ(幹事:帝京大学)、吉田健太郎(幹事:駒澤大学)

 

 東部部会事務局 E-mail: jasbs.east.14@gmail.com

 (東部部会事務局宛の連絡やお問い合わせにご利用ください)

 日本中小企業学会ウェブサイト:http://www.jasbs.jp/

 東部部会ブログ:https://jasbs14east.blogspot.com/

2021年 東部部会 第1回 研究報告会の開催報告

日本中小企業学会東部部会の第1回オンライン研究報告会は、オンライン会議

システム「Zoom」を利用して開催され、活発な議論が展開されました。


■日時 202182日(月)17:0018:10

■実施方法:Zoomによるオンライン報告

■参加者:21

■【研究報告】

報告者:清晌一郎(関東学院大学名誉教授)

テーマ:「電動化・自動運転をめぐる自動車部品産業の再編成と系列下請関係

     ー100年に一度の大変動の下で変容する日本的生産方式ー」

 ホスト・司会:堀潔(桜美林大学)

 報告内容:

 自動車業界における電動化・自動運転化(いわゆる「CASE対応」)に伴う世界の自動車部品産業への影響によって起きている業界構造の再編成と系列下請企業に生じている関係性の変化が議論された。2016年に世界自動車生産台数のピークを迎えた行き詰りを突破する戦略として、世界の主要自動車メーカーの間では、CASE対応のための新たなプラットフォームの構築にむけた動きが活発化していることが指摘された。さらに、主要サプライヤーにおける研究開発資金の肥大化を示すデータや特定技術を保有する関連サプライヤーの合併買収が進むデータなどから、世界ではシステム統合構成部品を自由に購買する分散型競争購買型の再編の組織化が起きていることが示された。また一方では、トヨタ自動車のようにサプライヤーとの緊密な関係を重視した最初からシステム構築の最適統合を目指す「系列型」のもう一つの再編の組織化が起きていることが示された。報告後の質疑応答では、今起きている自動車業界全体の再編における日本国内の2次・3次サプライヤーへの影響や、こうした国内サプライヤー目線の戦略の捉え方、ものづくり技術分野の開発とCASE対応分野の開発の2つの異なる次元の開発強化と国内中小企業との関連などが議論された。