日本中小企業学会東部部会の第6回オンライン研究報告会は、オンライン会議システム「Zoom」を利用して開催され、活発な議論が展開されました。
■日時 2021年8月27日(金)11:00~12:00
■実施方法:Zoomによるオンライン報告
■参加者:24名
■【第1研究報告】
報告者:長沼 大海(日本政策金融公庫総合研究所)
テーマ:「自然災害発生時に事業を継続させる企業の特徴と有効な備え―被災企業の事業 中断状況からみた分析―」
ホスト・司会:堀潔(桜美林大学)
報告内容:
日本政策金融公庫総合研究所「自然災害の経営への影響に関するアンケート」(2020年)の分析結果に基づき、自然災害の影響で事業を中断した中小企業の特徴と中断を防ぐうえで有効となる対策・備えについて議論された。同アンケート調査は2020年10月にインターネットを使って実施したもので、有効回答数は1万521件(事前調査)、1,326件(詳細調査)である。結論として、業歴が短い企業や経営状況が厳しい企業ほど、事業を中断しやすい傾向があることや、備えをする余裕がない企業に対して、災害の備えをおろそかにしないように積極的に周知し、サポートする取り組みが求められることが示された。さらに、積極的な被害だけでなく、間接的被害も事業の中断につながる可能性があることから、被害を食い止めるための対策の必要性が指摘された。また、従業員の多様化、連絡手段の確保、手元資金の確保といった備えを優先しておく必要性が示唆された。報告後の質疑応答では、新自由主義的視点からの政策的インプリケーション、災害発生時の資金調達方法、本研究における理論的枠組みの必要性や説明変数の扱い、推計方法などについての議論がされた。
■日時 2021年8月27日(金)12:00~13:00
■実施方法:Zoomによるオンライン報告
■参加者:26名
■【第2研究報告】
報告者:許 伸江(跡見学園女子大学)
テーマ:「中小企業とダイバーシティ・マネジメント」
ホスト・司会:堀潔(桜美林大学)
報告内容:
多様な人材の雇用の場としての中小企業の可能性と、中小企業のダイバーシティ・マネジメントの取り組みやその成果について報告された。従来から中小企業論においては、中小企業における女性や障害者雇用などについて多くの知見が蓄積されてきた。本報告では、ダイバーシティの定義とともに、これらの先行研究が整理された後、八つの事例が紹介された。そのまとめとして、経営者や組織文化がダイバーシティ・マネジメントにおいて大きな役割を果たすこと、事業承継や第二創業が契機となりうること、SDGsによって従来からの暗黙的な取り組みが捉え直され新たな気づきにつながっていることなどが考察された。そのうえで、中小企業の存続、発展に向けての戦略的なダイバーシティ・マネジメントの重要性や多様な主体の個性が発揮され、やりがいをもって仕事ができる‟場“としての中小企業の存在意義が論じられた。報告後のディスカッションでは、人的資源管理や中小企業における女性雇用に関する先行研究との接点や日本的経営論・雇用慣行との関連などが議論された。
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